OUT in KYOTO・古着屋座談会 VOL.1

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トークセッション

2020.11.30

OUT in KYOTO・古着屋座談会 VOL.1

「OUT in KYOTO」のローンチを記念した特集第一弾は、京都の古着屋を代表して、『Haole』の代表、清水さん、『HOMIES』の代表、桑原さん、ベテランのおふたりに加え、2019年にオープンした『VIORET』の幸西さん、今年1月にオープンした『YOU LOOK GOOD』の若林さんのいわゆるニューカマーによる、「京都古着クロストーク」をお届けします。

清水さんが語る京都古着シーンの黎明期や、桑原さんによるスマホ時代の古着屋、そしてSNS全盛のいまに突然現れたNEWタイプの古着屋を運営する、幸西さんと若林さんのトークをお楽しみください。

聞き手:井垣敦資-「OUT in KYOTO」主宰。姫路市出身。大学進学とともに京都へ居を移し、在学中に「ポールズブティック アンティークス」で古着の知識を蓄える。その後、セレクトショップを経て、現在の会社、株式会社ヒューマンフォーラムで「進化型古着屋 森」等のディレクションを担当。アパレル歴22年。

井垣 : 本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。この度、京都のユースカルチャー(街・古着・ひと)にフォーカスした新しいWEBメディア「OUT in KYOTO」がスタートすることとなりました。本日は、京都の古着屋のオーナー4名の方に、いまとむかしの京都古着事情についてフランクに雑談できたらと思いますので皆様よろしくお願いいたします。

清水: ええね。京都の新しい動き。

桑原 : 楽しみですねー。

幸西 : すごい! 誘っていただいて光栄です!

若林 : 私、今年オープンしたばかりなのにいいんですか !?(笑)

井垣 : 大丈夫です(笑)。よろしくお願いします。早速みなさんに質問ですが、なぜ京都で古着屋をやろうと思ったんですか?

Haole 代表 : 清水 弘道さん -1978年生まれ、兵庫県・明石市出身。大学進学とともに京都へ移り住み、1998年より古着屋『ハオリ』をスタート。2016年にはハオリと同じ御幸町通りにドライフラワー専門店『プルミエ・エタージュ』をオープン。若手からも“ひろみちさん”と呼ばれるように、京都古着シーンのお父さん的存在-

清水 : ぼくは地元が兵庫県の明石なんやけど、大学が京都やって。ツレも地元よりこっちの方が圧倒的に多かったし、よう遊んでたんも京都やし、行く店は古着屋ばっかりでしたね。で、25才で「ハオリ」をやり始めて。古着屋始めて、もう22、3年になるんかな。

HOMIES 代表 : 桑原孝之さん -京都・太秦出身。アメリカ村の名店をはじめとした大阪の古着屋で経験を積み、2006年に独立。オープン当初のアメカジ古着のラインナップから、ヨーロッパ古着をメインにシフトしたことで、全国より一目置かれる存在に。4児の父。

桑原 : 僕はこっちが地元で。めちゃくちゃ古着が好きっていうのもあって、大阪の古着屋とかで働いてましたけど、いざ独立するとなったときに、(強力なお店が多かったので)大阪では正直難しいやろうなーと思って。で、京都に戻ってお店をやりはじめたのが、清水さんと同じで25才でしたね。

VIORET オーナー : 幸西純子さん –大阪府出身・福岡育ち。日本を代表するコレクションブランドにて長年に渡り務め、2019年に独立。二条城南東に位置する式阿弥町の長屋とコンテナの建築物“SHIKIAMI CONCON”を舞台に、独自の世界観を発信する。

幸西 : わたしは地元が大阪なんですけど、前職で異動が多くて東京だったり神戸など転々としていたんですよ。で、結果的になんですけど、最終の異動先が京都で。自分のやりたいことを表現するなら場所にあまりこだわりがなかったんです。それが福岡だったら福岡でお店をやっていたかもしれないですし。ちょうど1年くらい前の12月からお店をやりはじめましたね。

YOU LOOK GOOD オーナー : 若林春奈さん –広島市出身。主にレディースを展開するショップにてアパレルの経験を積み、2020年1月、北大路・大徳寺近くに『ユールックグッド』をオープン。独特な商品名で展開するオンラインショップは必見。

若林 : 前職が某ギャルショップで、13、4年働いてて。

全員 : えー! 意外!

若林 : そうですか(笑)。元々、中学校のときから古着は大好きで。実は私、服しか好きじゃなかったんですよね。前職が結構長かったので、マネージメントとか売上管理とかを任されたんですけど、それには全然興味がなくて。で、アメリカ行ったときに「わたし、なにしてんねやろ?」と思ったのがきっかけで自分のお店を持とう、と決めて。わたしも幸西さんと同じく異動が多かったんですが、その時がたまたま京都だったので。河原町周辺からは離れた、北大路に今年の1月にお店をオープンしましたね。

井垣 : 清水さんと桑原さんが古着屋のベテランだとすると、幸西さんと若林さんは新興勢力と言うべきでしょうか。清水さんと桑原さんにお伺いしますが、昔の京都の古着シーンてどんな感じやったんですか?

清水 : 僕らが思う、街で遊んでるイケてる大人は、簡単に言うとリーバイスのXX履いて、クロムハーツ付けて、コラージュ(今は無き木屋町のクラブ)で呑む。古着屋でいえば『ロジャース』と、あとはいまもうないけど『クオリティイン』、『インポートピッツ98』の3件が凄かったかな。で、俺が23くらいのときやったけど『ポールズブティック』がギンギンの ’50sのロカビリースタイルを発信してた店やって。見ためロカビリーやねんけど、足元はプラダ履いて、みたいな。あれは当時ものすごいオシャレやった。あと、スタッフもお客さんもヤンチャなひとばっかりやったなー。で、そういう人が古着屋に集ってたわけやけど、当時の古着屋は怖かって。いま言うたら怒られるかもしれんけどホンマに『酒と喧嘩と…』っていうのが俺のイメージで、“カッコいい”と“怖い”がセットになってた時代。まあ昔の話やけど。それが京都の古着シーンの黎明期かな。

幸西&若林 : えー。こわ!

桑原 : おっしゃる通り、清水さんが挙げたショップはどこもカッコ良かったですね。そこから数年経って一般の服好きに古着が浸透していったっていう感じなんかなー。
で、いま京都で古着屋やってる方って、『ポールズブティック』とか『ロジャース』出身の人が多くて。それぞれのイズムを継承されているっていうか。

清水 : そう、濃い店ばっかりやって。僕はその時代、客としていろんな古着屋に行ってたわけやけど、その数年後に自分で店しはじめて。それが1997年か98年かな。

井垣 : その時代の話はなんとなく聞いたことがありますね(笑)。桑原さんがお店をやりはじめたのっていつからですか?

桑原 : 2006年です。当時はいまの場所の隣のビルの2Fで。前いた店がアメカジやったし、自分もアメカジばっかりで。で、いわゆる「古着屋」な、アメカジを全面に打ち出してましたけど、思ったよりも上手くいかなくて。総柄のTシャツとか打ち出したときもありましたけど、まったく売れなかったですね。ほんまに、2年くらいで潰れるんちゃうか? って思ってましたから(笑)。で、どうしよかなって考えたときに周りのお店と同じことをしててもアカンって吹っ切れて。それが、アメリカじゃなくヨーロッパ。時代性もあったんやと思いますけど、完全にハマったんで、そこからはブレずにでやっていますね。

井垣 : ほかのお店と差別化するのって大事だと思いますけど、相当な覚悟がいりますよね。。
幸西さんと若林さんはいかがですか?

幸西 : 清水さんと桑原さんのお店はヴィンテージに強いですけど、私にはそのバックボーンも無いし、ツテも無い。特に差別化とかは意識していないですけど、ほんとに自分の好きなものだけを置いてたらいいか、みたいな。元々、チャイナ服が好きで、店のホームページにも「大人古着チャイナ」って書いてますけど、いま全然お店に無いっていう(笑)。でも、自分的には良いチャイナが見つかるまでそれでいいかなって。前職がほんとに忙しくて、ストイックに働いていたので、今はゆっくりっていうか、余生を楽しむっていうか(笑)

一同 : 余生はや!

幸西 : ほんと大げさですけど、私ひとりだし、自分の分のお米とたくあんが食べられたらいいかな? っていう。マイペースでやっていけたら、と思ってますね。

若林 : わかるー!! わたしもほんとそうで、自分の店は目立ちたくないし、有名にもなりたくない。街中から離れている北大路っていう場所を選んだのも、元々住んでたっていうのもあるんですけど、来たい人が来てくれればいいっていう。周りの飲み屋さんとか喫茶店ものんびりマイペースでやっているお店が多いところで、時間もゆっくり流れているような。商売をしていて矛盾しているかもしれませんけど、あんまり流行りたくないんですよね。いろんな人っていうよりも私の好きなものをわかってくれる人に来て欲しい。間口を広げるよりも、わざわざ来てもらうお店が私らしいと思っているので。

井垣 : なるほど。でも、そういうお店こそイマっぽいっていうか、カッコいいと思いますよ。話変わって、いまはSNSで発信するのが当たり前になっていますが、ベテランとニューカマーでどんな考え方ですか?

清水 : 僕の場合は古風な人間なんで、ほぼやってない。やろうとしてもできないことはできないんでね。しいて言えば、アメリカのディーラーと連絡取りやすくなったくらいかなー(笑)。店のホームページとかSNSのことはスタッフに任せてるからええねんけど。

桑原 : ウチは、ブログは前からやってましたけど、SNSなんてもってのほかやと思ってましたね。いまでこそ、なんとか頑張ってますけど(笑)。ただ、SNSのやりとりってインスタントじゃないですか? 例えばたまにメッセージが来るんですけど、いきなり「肩幅、身幅、着丈測ってください」だけポンって。その前になんか一言くらいあってもええんちゃうか? とは思う時もありますね。返信してもそういうのに限って、お礼もないし、買ってくれないし(笑)。もちろん、SNSでウチの存在を知ってもらったりだとか、良い部分もありますけどね。すみません、僕も古い人間なので(笑)。あと例えば、僕の店で極端に言うと100円で売っているものが、隣の店やと50円っていう場合もあるじゃないですか。結局、SNSも含めて、自分の店の価値をどこにもっていくか、っていうのも重要になるんちゃうかなー、とは思ってます。

幸西 : ウチの場合は元々ホームページはあるにはありましたけど、あまりちゃんとしていなかったんですよ。そもそも、お店をやりはじめたのが去年の暮れで、すぐにコロナ時代に突入しちゃって。急いでちゃんと作りましたね。で、SNSも一日1、2ポストくらいですけど着画をあげています。いまでは売り上げはお店とオンラインでちょうど半々くらいかなー。

若林 : ウチはめっちゃ発信してますね。で、結構売れてるんですけど、正直イヤってわけじゃないんですけど、ちょっと違和感も感じてて。

清水 : 昔やったらニットが破れてたら、ダメージありで値段下げて店に出したりしてたけど、YOU LOOK GOODのオンラインショップって、商品のタイトルが「ちょっと穴の空いたセーター」、紹介文が「穴がかわいいよ!」みたいな感じで。それが僕からすると衝撃的やって。でもそれが時代っていうか、その店のキャラクターになるっていうんかな。これは、“売れるわ”って思うもん見てて。

井垣 : 上手なSNSとの付き合い方っていうんでしょうか。いまも、これから大事になってきそうですね。
最後にお店としてでも個人的でも結構なんですが、今後考えていることはありますか?

幸西 : んー。私はほんとに去年お店を始めたばかりなので、いまのままで良いかなと思ってますね。このままゆっくり、マイペースで…。

桑原 : 僕は、清水さんにも前に相談したことがあるんですけど、いまの店って人の持ち物でやらせてもらってるんで。極端な話、大家さんに出て行けって言われたら自分の場所なくなるじゃないですか。そうなったら完全に裸やし。なので、自分の城というか自分の土俵でやっていきたいっていう思いはありますね。

若林 : さっきも少し言いましたけど、コロナから力を入れ始めたオンラインがいまのところ強くて。元々、そんなにちゃんとやるつもりがなかったんですが、いざやってみると撮影がめちゃめちゃ楽しいんですよね。ほんまに楽しくて没頭してるんですけど、そうするとどうしてもオンラインの比率が上がっちゃったんですよね。でも、やっぱり実店舗が一番大事だと思っているので、お客様に来ていただけるようなこと、例えば自分が本当に好きなお店の人に来ていただいてポップアップイベントをやったり。そういった仕掛けをしていきたいな、と思っています。

清水 : 俺、ほんまこれ冗談やないねんけど、大人のおもちゃ屋やろうかな思ってんねん。“エロ”とかそういうキーワードじゃなくて、あくまで“大人の”…

※全員ずいぶんとお酒が入ってきたので、この後も猥談は続きます。また、清水さんの構想のネタバレになるので割愛いたします。

ほんで、だれか店任せられるやつおったらええなーって思ってるとこやねんなー。

幸西&若林 : 私たち店長やるー!!

全員 : 爆笑